2×4住宅部材の開発事業成果報告書
トップ > 研究開発総括(技術専門部会委員)

研究開発総括(技術専門部会委員)

(1)構造用製材関係


県産材販路開拓協議会1. 信州産木材204高耐久構造材開発に関する事業

本事業の目的は、(1)信州産ヒノキおよびスギで縦枠材を生産して、生産可能な縦枠材の性能を確認し、(2)その縦枠材を使用して試験住宅を建築して、施工性並びに施工後の品質確認を行うことである。
製材木取りとして枠挽きを採用しており、これはディメンジョンランバーの木取りとして北米で一般的に用いられている。側板から2枚の204材を挽いているが、これによりcrookが大きくなることがあるので、注意が必要である。
ヒノキ、スギのそれぞれ2400体という膨大な数の204材を用いて、曲げ・縦圧縮・縦引張り・せん断・めり込み試験、壁せん断試験、接合部試験を実施し、それぞれの性能を明らかにした。また、材料や構造要素の品質にとどまらず、204材をたて枠材として実際の住宅に使用し、住宅検証委員会及び一般ユーザーにおける施工検証、一般ユーザーに対する説明会を開催し、さらに、輸入木材を使用する場合とのコストの比較等を明らかにしたことを今後の展開に活用していただきたい。


郡山チップ工業株式会社2. 県産スギ材の2×4部材としての適合性立証普及事業

本事業の目的は、福島県産スギの需要拡大を図るため、福島県産田村スギから生産した2×4部材として必要とされる強度性能を有しているか検証することである。
比較的径の小さい丸太にはだら挽き、比較的径の大きい丸太には枠挽きを使用しており、これは北米で一般的に用いられている。材長2.4mの丸太からの歩止りがbowの影響で低くなっているが、ツイン帯鋸盤の使用によりある程度bowを抑制することができる。また、やや過乾燥気味であることも影響していると思われるので、スギ204材の最適乾燥スケジュールについて検討が必要である。
スギの場合、髄を含む204材の年輪幅は甲種枠組材の基準値である6mmを超えることが想定されるため、地域材に対応したJAS規格の改正を要望していく必要あろう。そのためには、本事業で得られたデータを整理し、年輪幅が6mmを超える204材の強度や密度が6mm以内の204材に対して低下するか否か、低下するならどの程度であるか等を明確にしておく必要がある。


大利木材株式会社3. 地域材(徳島杉)を利用したツーバイフォー部材開発・地域材(徳島杉)を利用したツーバイフォー部材としての合板代替品の開発

本事業の目的は、スギの有効利用を図るため、(1)徳島県産スギから甲種枠組材を生産して、その強度性能をカナダ産SPFと比較すること、(2)構造用合板の代替としてスギKD厚板を本実で幅はぎして作成したパネルの強度と構造用合板を用いたパネルと比較することである。
徳島県は、足場板の生産地として古くから伝統があり、幅広の厚板の生産技術は確立されており、その技術を208材や210材の生産に適用できると思われる。
スギ地域材を用いて、204材、206材、208材、210材、212材を製造し、強度試験を実施されており、現行基準強度に採用されている寸法調整係数を確認する上で興味深い。ただし、本事業では丸太の径級によって単一の寸法型式の製品が製材されているため、製品の品質は径級ごとの丸太の品質がそのまま反映していると考えられる。 しかし、歩止り等の向上を目的に、丸太から複数の寸法型式を木取りした製材を実施される場合には、製品の品質は横断面内における採材部位の影響を受けることが想定されるため、場合によっては、これらの関連性についての検討も必要になろう。


岡山高次木材加工協同組合4. ヒノキの集成化等による2×4部材開発

本事業の目的は、国産材の需要開拓のため、岡山県北部で供給量の多いヒノキを集成化し、2×4工法部材を製造して、その性能を検討することである。
集成化による2×4部材の製造は、無垢の2×4部材より手間がかかるが、小径木や曲がり材を利用でき、比較的小径の丸太からの410材などの比較的大断面の部材を可能にする。
本事業では、204たて継材、集成材204(E95,E105)、206(E95,E105)、404(E95,E1050,E120)、406(E95,E1050,E120)、408:6層(E95,E1050,E120)、408:9層(E95,E1050,E120)、410:6層(E95,E1050,E120)、410:12層(E95,E1050,E120)の23種類の製品が試験された、概ね集成材JASの基準値を満足できることが明らかになった。今後、今回得られたデータに基づいて地域のヒノキ材の有効利用のために活用するためには、各製品の製造に使用したひき板の強度性能を原木や木取りの観点で整理する必要があろう。


株式会社サトウ5. 北海道産カラマツ材による2×4工法住宅に向けたディメンションランバーの普及に向けた開発

本事業の目的は、成熟期を迎えた道産カラマツの用途を産業用途から、より付加価値の高い建築用途へ転換するため、(1)道産カラマツ2×4材の強度性能を把握すること、(2)道産カラマツ2×4材を用いた2×4工法住宅を建築しその可能性を探ることである。
年輪幅の規定により甲種3級と格付けられた204材、206材が多く、日本農林規格においてこの規定の緩和がなされれば、甲種2級以上の材の歩止りが大幅に向上する。したがって、スギと同様に、本事業で得られたデータを整理し、年輪幅が6mmを超える204材の強度や密度が6mm以内の204材に対して低下するか否か、低下するならどの程度であるか等を明確にし、規格改正を要望していく必要がある。


中井産業株式会社6. 地域材を利用した2×4住宅部材の開発

本事業の目的は、県産材の利用促進のため、「2×6」の縦継ぎ材、「2×6」集成材の強度試験データを得ることである。
すでに確立された縦継ぎ材、集成材の製造手順により生産されているが、無垢の2×4部材より手間がかかっている。
スギ原木径20〜28cmから、径級に合わせて木取りされている。ヤング係数の出現頻度には原木径級による差は認められない。今回製造された206集成材(幅はぎL60)は集成材JASE55-F225に、また、206集成材(幅はぎL70)はE65-F255に相当する強度性能を有することがわかった。ただし、5層の異等級構成集成材を製造する場合、スギひき板のヤング係数による等級区分では最外層用のL70以上の出現頻度が約15%で必要量に足りないため、全ひき板の約40%しか利用できない。今後、原木段階での選別や通常使用しているヒノキ材との複合などにより歩止りの向上を図る必要があろう。


北米産業株式会社7. 国産材をもちいたランバー材、フィンガージョイント材の開発

本事業の目的は、地産地消による木材利用体制構築ため、SPFにかわる愛媛県産スギ・ヒノキ2×4工法住宅部材を開発することである。
ヒノキ原木径24〜29cmから得られた最終製品の材積歩止りは30%で、これらを目視等級区分した結果3等以下になったのは10%であった。通し材、FJ材の曲げ試験に供した材の等級はほとんどが特級であったが、曲げ強さはHem-Tamクラスの強度であることが確認できた。スギ原木径30〜42cmから得られた204材と206材の最終品の材積歩止りは34%で、目視等級区分の結果、204材では3等以下が18%、206材では3等以下が13%であった。通し材、FJ材の曲げ試験に供した材の等級8割以上が特級であったが、W-Cedarクラスの強度であることが確認できた。FJ材の引張強度についてはヤング係数との相関関係が通常より弱い傾向があるので、縦継ぎの工程管理を再度見直すことで品質の向上が可能であると考えられる。


国産材製材協会8. 国産スギ、ヒノキ、カラマツの2×4住宅部材開発のための強度測定、データ収集

本事業の目的は、国産材の2×4材としての新需要開拓並びに日本農林規格の見直しにおける基礎資料とするため、スギ、ヒノキ、カラマツについて試験体作成まで含めた統一した試験方法による強度データを集積、評価することである。
製材木取りにおいて、丸太の径および製材品の寸法により、だら挽きと枠挽きを使い分けている。
本事業は地域材に対応した規格・基準の見直しのためのデータ収集を目的にしているので、スギ、ヒノキ、カラマツについて、国内の広範囲の地域、特にスギについて得られた結果は秋田から鹿児島までの14県から供試材を収集し、強度試験を実施している貴重なデータである。特に、204材や206材の強度が在来軸組構法に使用される構造用製材の強度データと比較して、曲げヤング係数や各強度について平均値に大きな違いがないのに対し、バラツキ(変動係数)が大きいことが指摘されている。在来軸組構法の構造用製材の既存データのほとんどが心持ちの柱やはりから得られているのに対して、204材は髄を含んだものや髄から距離をおいたものを含んでいることが影響していると推察される。


構造用製材関係のまとめ
ランバー関連事業を全般的にみて、いずれの事業においても丸太の形状・品質・木取りから接合部や耐力壁を含めた製品の性能試験が実施されており、様々な項目についての膨大な測定データが得られている。しかし、事業終了時の現時点ではデータ整理の段階と考えられ、今後、これらのデータを整理し、地域材による2×4材生産に有効な解析結果が得られることが期待される。
今後の検討事項を以下に例示した。
・  地域材による204材と輸入木材には価格に大きな開きがあるため、本事業の成果を参考に、丸太の径級や品質に対応した木取り法や204材の最適乾燥条件等の製造加工面から検討を進め、コスト抑制を図る必要があろう。また、丸太の径級や品質、木取りは製品の品質(JAS等級)にも影響を及ぼすと想定されるので、強度と同様に、これらのデータを整理し、分析されるべきと考える。
・  本事業の報告では、地域材の材料、接合,耐力壁の性能を枠組壁工法建築物の標準的な材料として使用されているSPF材の基準値や試験結果と比較したものが多いが、地域材の性能がすべてSPF材の性能を満足するわけではない。したがって、今後は得られた試験データを基に、地域材に対応したJAS規格や基準強度の適正化を要望するとともに、枠組壁工法建築物に使用した場合のスパン表や設計事例等を作成し、設計者や工務店等のユーザーへ情報提供していくことが必要であろう。
(文責:村田光司、長尾博文、宮武敦)

ページの先頭へもどる

(2)トラス、I型梁関係


FPコーポレーション株式会社1. 北海道産材ランバーによる木造トラス部材の商品化及び流通整備事業

本事業は、ほぼ100%輸入材で賄われている木質トラス市場に対して、北海道産材(トドマツ、カラマツ)を用いた木質トラスを開発するものである。
事業内容としては、製材段階から詳細に木取りの検討を行い、標準試験法に沿って緻密な実験データが得られている点で非常に有用性が高い成果を上げており、メタルプレートコネクター接合部の強度性能やトラスとしての性能、天井構面としての性能までチェックしている点は、今後の普及には欠かせない貴重なデータとなろう。また、製造コストは2倍かかるとのことであるが、製材廃材の転用などにより製品価格を2割増し程度に抑える努力もしており、今後の需要増加と共に価格もさらに安定してくることが期待される。さらに、北海道内での普及促進を早期に実現するために、道産材トラスの設計法、品質管理基準等を定めると共に、道内の建築実務者を対象にモニタリングセミナーを5回も開催し、延べ150名ほどの現場の要望を聞いている点は非常に評価できる。
北海道という枠組壁工法住宅のシェアが高い地域で、北海道産材を活用した新しいトラス工法を開発し、普及に努められることを期待したい。


三井ホーム株式会社
三井ホームコンポーネント株式会社
2. 地域材を使用した木質トラス工法の腐朽のための技術整備

本事業は、中大規模建築物の需要の高まりに対応すべく、特に国産無等級スギ材の活用を目指して、国産材を用いた木質トラス工法の技術開発を行ったものである。
事業内容としては、メタルプレートコネクター接合部の評価と設計基準・品質管理基準の整備、実大屋根トラスの曲げ性能や平行弦トラス床の歩行振動の検証など、スギ材を用いた試験体による性能検証を積極的に行っており、さらに、既存ソフトウェアを改良することにより木質トラスの設計システムを構築し、早期実用化を想定した研究開発を行っている点は高く評価できる。
枠組壁工法構造用製材のJAS認定工場の不足や長尺材入手の難しさ、国産材材料性能に関する知見の蓄積不足等、今後に対する提言もされているが、目視検査とグレーディングの組み合わせによって品質のバラツキを抑制するといった新たな品質管理基準の可能性を見いだしていることもあり、今後の普及・発展への道筋は既に見えているものと期待するところである。


三菱地所ホーム株式会社3. 地域材を使用した場合の構造材接合部及び接合金物の耐力評価

本事業は、枠組壁工法建築物を構造計算する際に必要となる“くぎ接合部のせん断耐力”や“金物接合部のせん断・引張耐力”等について、現行告示等に数値が記載されていない国産樹種を用いた場合の性能を実験的に検証したものである。
事業内容としては、スギLVL、カラマツLVL、ヒノキ集成材、国産材合板について、くぎのめり込み試験(木材、合板)、くぎ接合部の一面せん断試験、各種接合金物のせん断・引張試験等を網羅的に実施しており、そのほとんどがSPF甲種2級を使った場合の数値以上であることを確認している。これらは国産材を用いて設計する際には重要な知見として活用されることが想定される。貴重なデータ集が得られたことは評価したい。
ただし、試験体として使用した材料の密度等の品質に関する情報が乏しいため、使用した材料の品質・性能を明らかにした上で接合部性能の比較・検証をすると更に説得力のある技術的知見になったと思われる。実験データの再整理に期待したい。


株式会社キーテック4. 国産材料を用いた高性能な純国産I型ジョイストの開発

本事業は、国産材を用いた高性能な純国産I型梁の実用化と普及を目的とし、製造技術の検討や各種特性値のデータ整備等を行ったものである。
事業内容としては、カラマツLVL又はスギLVLをフランジ材に、カラマツ合板又は国産パーティクルボードをウェブ材に使用したI型梁について、製造条件及び品質管理手法の検討、建築基準法第37条認定に係る各種力学的性能・調整係数の検証実験、水平構面への利用を想定した配管用孔の設置基準検討、端部金物接合部および床構面の性能評価、ホルムアルデヒド放散評価等、実用上必要になると思われるほとんど全ての項目について詳細な検討を行ったものであり、非常に高く評価できる。今後は、これらの成果を使いやすいマニュアルとして早期に整備し、構造計算ソフトへ組み込むといった普及・実用化への取り組みに期待したい。
従来、北米製品が主流であった市場に、国産材を用いた製品開発に積極的に取り組んでおり、今後の更なる研究開発に期待したいところである。


トラス、I型梁関係のまとめ
本グループでは、国産材を用いて枠組壁工法建築物用の木質トラスやI型梁といった部材を開発する事業およびそれらの基礎となる接合部性能を検証する事業であったが、いずれの事業体も、スギやカラマツといった国産材を何とか使えるものにしたいという意気込みが感じられ、有用な成果が非常に多く得られたと思われる。また、製造基準や品質管理手法の検討のみならず、実務者へのヒアリングを実施するなど早期に実用化できるレベルまで研究開発を行っていることは高く評価したい。
これまで外国産材だけで賄われてきた枠組壁工法用の部材であるが、国産材を使用した場合でも同等以上の十分な性能を有することが実験的に確認できたことは、今後の展開に大いに期待の持てるところである。
現段階では、枠組壁工法用製材のJAS認証を取得している工場が不足しており、一般に流通するまでにはもう少し時間が必要と考えられるが、積極的に使用したいという現場の要望に応えるべく、いつでも製品を供給できる体制を整えておくよう準備を進めておいて頂きたいものである。
(文責:林知行、青木謙治)

ページの先頭へもどる

(3)複合パネル・耐力壁関係


エス・バイ・エル株式会社1. 地域材の2×4住宅部材を用いる木質接着複合パネル(木質プレハブ・木造用)の開発

本事業は、国産材の枠組壁工法用製材(JAS製材)の生産が増加傾向にあり、これらを適切に利用することが循環型社会形成に寄与することから、木質プレハブ工法及び木質接着複合パネルの枠組材への国産材利用の可能性を探り、実用化に向けた具体的適用事例の作成を行うことを目的としている。
事業内容として、(1)国産材の利用可能性調査、(2)国産材の機械を用いた強度評価および選定、(3)国産材を用いた木質接着複合パネルの試作、(4)試作した木質接着複合パネルの強度評価、の4点について検討を行ったものである。
検討の結果、(1)国産材の蓄積量、生産予測量は枠組材として利用可能な水準にあること、(2)ヒノキはSPF甲種2級の基準強度に匹敵する性能を示し、スギはSPF甲種2級の基準強度と比べて遜色ない値を示した材も少なくないが、産地間で強度の差異があること、(3)木質接着複合パネルの試作上、特段大きな問題はないこと、(4)パネル化により強度性能の向上が見られること、が知見として得られた。
すなわち、事業成果として、(1)ヒノキに比べてスギはバラツキが大きいが、産地によってはSPF甲種2級やヒノキと遜色ない品質の製品が存在することから、適切な選別を行えば利用が可能であること、(2)枠組材の強度のバラツキが大きくても、床パネルの面内曲げ試験、壁パネルの面内圧縮試験においては、パネル化による効果で部材の性能の向上が見られることから、パネル化により必要とされる強度性能の確保が可能であること、を明らかとしたことが評価される。
また、今後の課題として、(1)枠組材の曲げ試験において、ヒノキはSPF甲種2級の基準強度と比較しても高い数値を示すが、枠組材の強度試験結果と曲げ試験結果の相関の程度は産地や樹種によって異なること、(2)動的ヤング係数が低い材であっても優れた性能を持つ材もあるため選別方法を検討する必要があること、が指摘されており、これらも有用な知見であるといえる。
以上まとめると、枠組材として評価した場合、スギ材はバラツキが大きいものの、選別による統計的性能値の向上の可能性と、パネル化による性能向上効果が見込まれることから、これらの活用によって今後の実用化が期待される。


東京合板工業組合2. スギ等国産材合板による高強度耐力壁の開発

本事業は、枠組壁工法においてより多くの国産針葉樹(地域材)を活用するとともに、耐震性を高めるため、国産材合板の厚さ、くぎの種類と間隔等を変えることにより、従来のラワンを主たる原料とした構造用合板1級を張った耐力壁の倍率3.5を超える高強度耐力壁を開発することを目的としている。
木造軸組構法においては、合板厚さ、くぎ種類、くぎ間隔、仕様(大壁/真壁ほか)を変えた多くの耐力壁を開発し、国交省大臣認定を取得している実績を踏まえ、(1)これまでの知見を基に高強度耐力壁の仕様を設計し、性能を確認する予備試験を実施すること(実施場所:東京大学)、(2)最終仕様を選定し、評価機関において評価を受けること(実施場所:(財)日本住宅・木材技術センター)の2点を実施したものである。
高強度耐力壁の評価を受けた仕様と評価結果は以下のとおりである。

合板 くぎ 倍率
樹種 厚さ(mm) 張り方 種類 間隔(mm)
全層スギ 12 片面 CN50 50-200 6.1
CN65 100-200 4.2
75-200 5.2
50-200 6.1

これらにより、全層スギを原料とした合板を張った耐力壁によって、目標が達成された。また、これら以外に、合板の両面を枠組材で挟んで固定する新規構成による耐力壁の検討も行い、極めて高い性能を有することも確認している。さらに、耐力壁の評価の際に必要とされる事故的水掛かりによる低減係数の導出も行っている点は、高く評価される。事業の成果と今後の課題として、(1)評価書に基づき、国土交通大臣の認定を取得すること、(2)開発した耐力壁の技術資料を整備し、(社)日本ツーバイフォー建築協会等を通して、普及に努めること、が挙げられており、今後事業体が独自に実現を目指すとしている。
以上まとめると、本事業で得られた成果は、木造戸建て住宅の性能向上に資するのみならず、公共建築物等の中層・大規模建築にも発展可能な技術であり、地域材の需要拡大に大きな役割を果たすと考えられる。


複合パネル・耐力壁関係のまとめ
本グループの開発対象とする複合パネル・耐力壁は、軸材料と面材料の組み合わせよって成り立つ、いわゆる複合部材である。複合部材においては、材料単体の性能のみから部材全体の性能を予測・設計する手法は必ずしも確立していない。このことは、新規に開発した部材の実用性を評価する際に、実験的手法によって性能の統計的下限値を保証する必要があることを意味し、膨大な時間と労力を要する製品開発上の障壁となっている。その一方、部材の要求性能を達成する方法として、使用材料の構成方法に関する検討を行うことで、必ずしも性能が高い材料を使用する必要はないことも示している。すなわち、本グループの成果は、構成材料の性能値にとらわれず、利用方法を工夫することで実用化が可能となることを明らかとした点で、スギ等地域材を枠組壁工法建築物に使用するための技術開発課題として大きな意味を持つと考えられる。これらの複合部材は、新たな地域材の需要先として極めて有望であることから、今後、残された課題が早急に解決されることを期待する。
(文責:渋沢龍也、岡崎泰男)

ページの先頭へもどる